ナス科トウガラシ属植物 (Capsicum spp.)

信州大学大学院総合理工学研究科植物遺伝育種学研究室において研究対象とし、実際に栽培している(していた)作物および近縁野生種について紹介します。

Capsicum annuum L.
トウガラシ
唐辛子、蕃椒、辣椒、Chili pepper



メキシコ周辺が起源地とされており、現在では熱帯から温帯にかけての広い地域で栽培されている。白色の花冠を持つ。全く辛味のない品種から高辛味品種まで幅広い辛味成分含量変異が認められ、かつ、果実型も多岐にわたるため、果菜用、香辛料用、観賞用と利用法に応じた品種が栽培・利用されている。

Capsicum frutescens L.
キダチトウガラシ



中米、東南アジア、アフリカなど熱帯から亜熱帯にかけての広い地域で栽培されている。薄緑の花冠を持つ。辛味が強く小型の果実をつける品種が多い。また、完熟果実は果梗から脱離しやすい。タイのプリックキーヌー、メキシコのタバスコ、沖縄のシマトウガラシなどがこれにあたる。

Capsicum chinense Jacq.



熱帯から亜熱帯にかけての地域で栽培され、主に中南米、アフリカに栽培地域であるが、アジアでの栽培は少ない。薄緑の花冠を持つ。辛味が強く、卵形からベル型の中型の果実をつける品種が多い。世界で最も辛いとされているメキシコ・ユカタン半島のハバネロの他、ダティル、スコッチボンネットなどの品種がある。C.frutescensとは遺伝的に近縁とされる。なお、インド、バングラデシュ周辺でみられる辛味の強いブ-ト・ジョロキアやその類似品種についても本種であるとされるが、ある程度、C.frutescensの遺伝子も持ち合わせているとも言われている。

Capsicum baccatum L.
Aji



南米原産、そのほとんどは南米でのみ栽培されている。現地で「アヒ」と呼ばれるトウガラシでこの種に属するものがある。緑色~黄色の斑点のある白い花冠にを持つ。辛味はかなり弱いものからが強いものまで幅広く、果実も比較的大きいものから小型のものまで様々見られる。

Capsicum pubescens R. & P.
Rocoto (Locoto)



ペルー等のアンデス山脈地域で主に栽培されロコトという名前で利用されている。メキシコ、コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラスなど中米でも栽培される。花冠は紫色、茎葉の毛が多い。果実の果肉は厚く、辛味が強い。種子の色が黒色であることが特徴的で他のトウガラシ属とは異なる。

Capsicum praetermissum Heiser & Smith
Pimenta Cumari



ブラジル南部に自生する野生種。現地では採取利用されている。C.baccatumの亜種としてC.baccatum var. praetermissum とする場合もある。花弁が繋がっており、花冠にはC.baccatum 同様に斑紋がある。果実は小さく、辛味を持つ。

Capsicum cardenasii Heser & Smith
Ulpica



ペルー、ボリビアに自生する野生種。現地ではウルピカと呼ばれ採取利用されている。葉は他のトウガラシ栽培種に比べ小さくて茎、枝も細い。花も他のトウガラシとは異なり釣り鐘状で紫色~白紫色。自家不和合性であり自家受粉しない。果実は小さく、辛味を持つ。

Capsicum annuum L. var. glabrisuculum
Chil tepin


メキシコからアメリカ合衆国 南西部に自生するC.annuumの野生亜種。現地ではチル・テピンとして採取利用されている。

Capsicum chacoense Hunz.


アルゼンチン、ボリビア、パラグアイなどに自生する野生種。